天文の基礎 星空のいざない 
 星の見え方  



夜空を見ると星々は同じ距離にあるように錯覚します。まるで大きなボールの中に居て針孔から漏れ出る光を見ているようです。


星が描かれているカンバスを天球といいます。普段目にする星には太陽のように自ら燃え光を放つ恒星、恒星を廻る惑星、惑星を周る衛星そして彗星や小惑星のような小さな天体があります。

星の殆どは恒星で私達の太陽系がある銀河系の中の天体です。残念ですが他銀河の星は遠すぎて一般の人には見る機会がありません。


日中、星が見えないのは大気により太陽光が散乱されて短波長の青い光に星の光がかき消されるからです。「レイリー散乱」と呼ばれています。極端に大気が薄い月では昼間でも空は漆黒です。

例外があります。月、金星、一部の彗星は非常に明るいため昼間に見えることがあります。


星はそれぞれ異なる距離にありますが、あまりにも遠いので面積を持たない点に見えます。このため距離感は感じられませんが色・明るさの違いは解ります。


明るさの尺度として見掛け上の明るさ(眼視等級)と本来の明るさ(絶対等級)があります。大きな星でも遠ければ暗く、反対に近ければ明るく見えるのは日常生活でも想像しやすいものです。

絶対等級は天体が32.6光年(1パーセク)先に在ると仮定したときの明るさで星本来の明るさの尺度に使われます。

見掛けの明るさの単位が(眼視)等級です。肉眼で見える最も暗い星を 6等とします。これを基準に等級の値が減る毎、明るさが 2.5倍になると定め、また 0等より明るい星は -1、-2等と数えます。1等星は 6等星の 100倍の明るさ になります。


夏の夜空に翼をひろげる白鳥座の輝星デネブは眼視等級 1.3等ですが絶対等級は  -7.2と銀河系で最も明るい恒星の一つです。

 

 

「星の数ほど」と言いますが、どれくらい星が見えるでしょうか?

表1を見てみましょう。 

市街地は90程度。山間や海では 8,000。ずいぶん差があります。

「星の数」も場所次第で実感が伴いません。アース・デイ等の活動を通じ住む街本来の星空を眺めてみたくなりませんか?    
 

    表1 肉眼で見える星の数
   
 
 日周運動による星の見え方  




異国で見る星空は住み慣れた所で見るそれと何か異なっています。
旅先でこのように感じることがあります。

星座の角度が違ったり見たことない星があったりといろいろです。
これらは見る場所の緯度が異なっていることによります。 

中緯度の地域では

 北半球ではこぐま座のアルファ星付近を中心に時計とは反対向き
 に南半球では八分儀座の一点を中心に時計方向に回ります。

赤道付近では(北半球)
 
 真東の星は真直ぐ昇り頭上を越え西の地平線に沈みます。北の方
 角を見ると地平線すれすれに見える北極星を中心に反時計回りに
 半円を描きます。季節の移ろいの中でほぼ全ての星が見えます。
 
極地では

 不思議な星の動きが楽しめます。星は地平線と平行に回り続け沈
 みません。夏には太陽は沈みまず、冬には太陽が昇らない極夜が
 続きます。オーロラの荘厳な眺めに胸を打たれることでしょう。


天の南極・北極は動きまわる

 天の南極・北極は地球の自転軸の延長線の一点です。止まる前の
 コマに似てすりこぎのように動きます。歳差運動といいます。こ
 の運動により天の北極・南極は不動ではありません。原因には月
 の軌道太陽や他の惑星の重力の影響等色々な説があります。
 
 周期は約25,800年。天の南極・北極は円を描いて移動します。

 西暦14,000年、天の北極はこと座のベガ付近にあります。ベガは
 明るいので北極星を見つけるのもたやすくなるでしょう。

 
季節も反対に

 歳差運動により地軸の傾く方向も変わり四季に影響を与えます。

 12,000年後は、北半球で1月は夏の真っ盛り。カレンダーの絵を
 考え直す必要があります。
 
 
自転に関するデータ
 
 地球の自転周期

  1回転するのに約23時間56分ほど。24時間には少し足りません。
 
  一日の長さ
 
   太陽への向きによる1日は24時間です。地球のある場所が太
   陽に対し真正面になってから次の同じ状態になる迄の時間を
   一日としています。

   公転の影響で自転一回に加え 0.986度余計の回転が必要で、
   時間にすると約 4分。自転周期と合わせれば24時間です。

 
 自転による運動

  地球外から見れば、地球にある物全てが動いているのが解りま
  す。自転による円運動で赤道上では時速 1,700Kmに達します。
 

 自転軸は傾いている

  地球の自転軸の傾きにより季節が変化します。地球上の一地点
  で一年を通じた太陽南中高度を見てみると大きく変化します。
  北半球では夏至に太陽は最も高いところまで登るので昼が長く
  太陽から得る熱量が最大になり夏をもたらします。冬至ではそ
  の反対になります。

  この傾きは正式には赤道傾斜角と呼ばれ地球公転面と赤道面が
  なす角度です。特に高い精度が必要でない日常生活では23.4度
  の値が一般的に用いられています。

 季節で移ろう天体  


季節の移ろいで見える星々も移りかわるのはなぜでしょうか?


地球は太陽の周りを一年かけて巡ります。観察対象、太陽、地球の位置関係を考えてみます。ある場所が太陽と同じ方向にあればそこは昼間で星は見えません。太陽の反対側とその周辺が夜空の範囲です。地球公転につれて夜空として見える領域も移動します。


季節によリ昼夜の長さが変わります。赤道傾斜角によるもので特定の場所を照らす太陽光の降り注ぐ角度が変化します。夏至の頃太陽は高く昇り、夜は短く夜空は約5時間。冬至の頃の太陽は低く、夜は長く10時間ほどになります。見える天体の高さも太陽が昇る高さ のように変化します。
 
 

 おとめ座には銀河団があります。100-200mm で撮影すると小さな
 銀河が群れを成しています。北斗七星の大熊座周辺にも大きくて
 見栄えの良い銀河があります。春は大気の揺らぎや黄砂の影響で
 少々撮影が難しい季節です。
 

 天の川は銀河系中心方向を銀河系の端から見ている姿で、射手座
 付近の明るい部分が銀河の中心方向といわれています。夏は白鳥
 座を忘れてはいけません。この領域には赤い散光星雲が多く、撮
 影対象が豊富です。こぎつね座、こと座、みずがめ座の惑星状星
 雲も見応えがあります。
 

 カシオペア座、ケフェウス座、アンドロメダ座、さんかく座、お
 うし座、オリオン座には撮影対象が目白押し。秋は空の透明度に
 優れ、銀河や星雲、星団を高品位に撮しとることができます。


 オリオン座を中心に魅惑的な散光星雲の多い季節です。オリオン
 座のM42や馬頭星雲をはじめ、おうし座のかに星雲、いっかくじ
 ゅう座のバラ星雲など色調豊かな撮影対象がいっぱいです。空の
 透明度は秀逸で気流が良ければ最高の機会といえます。
 厳寒期なので機材や身体の保温の備えが必須です。  

 天体の位置 〜 座標系    



星の位置はどう表現すればよいでしょうか?

 
特定場所を指すには方角を使うのが一般的です。星であれば「南の空高くに見える明るい星」となります。これは地平座標による表現で直感的に解り易いのが特徴です。
 
ところが別の場所に居る人に位置を伝えるにはこれでは不十分、同じ星でも見ている場所や時刻が違えば方角や高度も変わります。
 
正確に伝えるには「場所は東京の大田区、午後8時3分頃、南の方角に高度約60度に見える」となりますがこれでもまだ十分ではありません。

例えば日本からメキシコに居る人に伝えたとしてもこれを基に特定の星を見つけるのは困難です。天体の位置を指すのに適していません。
 
地球にいる人同士が特定の星の位置情報を交換するには地球共通の座標系が必要のようです。

 
赤道座標というものがあります。

天の赤道は地球の赤道を天球に投影したもので、黄道は地球から見た太陽の軌道を天球上に表したものです。地球の自転軸が傾いているために二つの道は2点で交差します。南側から北側に交差する点を春分点と定めます。反対側は秋分点です。赤道上の位置を示すには赤経という単位を使います。春分点が起点で値はゼロ。天の赤道一周を24時間に刻み、一点を指し示すのに時・分・秒を用います。

天の赤道からの傾きを表すのには赤緯という単位を使います。天の赤道が起点で 0度〜90度の範囲で度・分・秒で表現します。北方向が正の値で南方向にはマイナスの符号を付けます。

 
 略号

  赤経 RA : Right Ascension
  赤緯 DE : Declination

 
地上にいる人は RA/DEで天球上の一点を指し示すことができます。そのため天体には特定の赤道座標値が与えられています。
 
自動導入式赤道儀では赤道座標や天体名を指定すれば自動で望遠鏡を対象に向ける事が可能です。
 



おまけ - 地上の場所を表す地理座標
 
赤道座標は地理座標に似ています。
地理座標は経度・緯度で表し、経度はイギリスのグリニッジを起点にしており東西方向にそれぞれ東経・西経と大別します。単位は天体の座標と異なり度・分・秒で、値の範囲は 0〜180度です。
 
緯度は赤道面からの高度角度を表しています。単位は度・分・秒で値は 0〜90度、北側は北緯、南側は南緯と呼び符号はつけません。
 
この座標で地球上の一点を指すことが出来ます。最近では GPSの普及でこの座標値を見かける機会が多くなりました。